活動報告

つながり・ぬくもりプロジェクトの活動報告になります。

脱原発世界会議「木質バイオマスの普及と復興支援活動のご紹介:唐澤晋平さん」

「木質バイオマスの普及と復興支援活動のご紹介」
日本の森バイオマスネットワーク 事務局長 唐澤晋平さん

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―3月11日以降の取り組みについて
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私たちは3月から緊急的な支援活動に取り組んでいまして、活動をしているのは、宮城県の栗原市です。津波の被害はまったくなくて、最初の1週間ぐらい停電しましたが、あとはそんなに大きな被害はなかった地域です。
地震の翌日、副理事長の大場がラジオのニュースで、津波からは助かったけれども、避難所で低体温症で亡くなる方がいるというのを聞いたんですね。当時は、電気も止まりライフラインが停止して、灯油や石油がまったく入って来ないという状況だったんです。避難した後で、まったく暖房が使えず、身体が濡れてしまったり、雪も降るような季節でしたから、体調を崩す方が相次いでいるというのがわかりました。
うちの大場がやっている製材所でペレット燃料を生産しており、すぐにでも供給できる体制があったので、さいかい産業というペレットストーブを作っている新潟のメーカーにお願いをしたところ合計40台送ってくれました。それを気仙沼から石巻まで、合計43台取りつけることができました。
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―緊急支援からの切り替わり、つながり・ぬくもりプロジェクトとの協力
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緊急的な避難所に対する支援は、1か月ぐらいで終わりました。避難所もそれぐらいになるとだんだん解散してくるところも出てきたので、ペレットストーブは、1回、回収しました。
さいかい産業に「終わったので、返したい」と言ったら、「格好悪いから、そっちで使って」と言われまして、じゃあ今度は、寒くなってくる季節に向けて、被災地に取り付けをしていこうと動きました。
避難所から仮設住宅に移って、復興計画を考える段階になると、震災でライフラインがない経験をした被災者からは、今後、復興の中で、自然エネルギーを使っていきたいというのが強くなってくるんですね。ただ、行政も市民の方も全然イメージがわかない、話では太陽光とかバイオマスとか聞いているけれども、見てみないと何にもわからない、ということで、被災地の方から、ペレットストーブを取り付けてくれないかという相談が相次いできました。
そこで避難所からのリユースを、今度は設置費用だけを寄付金でまかないながら設置していきましたが「つながり・ぬくもりプロジェクト」からも設置費用の協力をしてもらえることになりました。そして去年の年末、石巻市の女川町というところの仮設集会所にペレットストーブを設置しました。ここは、被災者のコミュニティ・カフェになっていて、火が見えて、とても暖かいということで、とても好評をいただいております。
この後も、まだまだこれから寒い時期が続きますので、ペレットストーブを被災地に取り付けて、いろんな人にこういう技術があるんだということを知ってもらうことで、これから復興していく中で、木質バイオが促進されるのではないかなと思っています。
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―手のひらに太陽の家プロジェクト
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あと、もう一つ、「つながり・ぬくもりプロジェクト」と協力しながら取り組んでいるのは、
「手のひらに太陽の家プロジェクト」という4月頃に立ち上がったプロジェクトです。
当時、仮設住宅の問題がいろいろと取り上げられておりまして、私財もないし、土地もないし、なおかつ、阪神大震災の頃から仮設住宅の住環境の問題が取り上げられていました。
入ったはいいけれど、断熱材が薄くて寒いとか、結露するとか、騒音がひどくて全然子供が遊べないとか。
あと、仮設住宅というのは、同じ地域に住んでいる人たちが全然別の場所に行ってしまう時があるんですね。その移った先で、全然顔の知らない地域の人たちで、そこでコミュニティが寸断されてしまって、実際に孤独死とか自殺というのが起きているんです。そういうことが4月の段階でわかっていたので、じゃあ、仮設住宅に代わるもっと新しいものがつくれないかと思いまして、それもプレハブのような無機質な家じゃなくて、ずっと使えるような国産材、地元の木を使った家を作ってあげようということで、「この手のひらに太陽の家」というのをはじめました。
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この家自体が国産材を使い、あと自然エネルギーですね、太陽光であったり、我々がやっているペレットストーブ、ペレットボイラー、太陽熱利用、そういったものを取り込んでいくことで、今後、10年20年かけて復興していく中で、この家をモデルにして、自然エネルギーの活用の声が地元で上がるような持続可能な復興につなげたいなというプロジェクトです。
この家は、アウトドアメーカーのモン・ベルさんからの支援で建設を進めていて、宮城県の登米市に建設中です。現在造成がもうすぐ終わって、基礎工事に入るところです。「つながり・ぬくもりプロジェクト」からは、この太陽熱の給湯と太陽光発電を寄贈していただくことになっています。
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あと、ペレットのボイラーは、中国からいただいた寄付金で、さいかい産業の方に依頼して、開発していただきました。このペレットボイラーで沸かしたお湯をタンクに貯めておくんですね。それで、お風呂とか洗いものもできますし、その熱をパネルヒーターで回すことで、これ1台で全部の部屋の暖房ができるという暖房システムを作ろうと思っています。
あとは、ペレットストーブも取り付ける予定です。この家に誰に入ってもらうかということをいろいろと考えていたんですけれども、この間、クリスマスの頃に、福島の「子供たちを放射能から守る福島ネットワーク」の方と会いまして、まだまだ福島から避難、疎開したがっている親御さんがいらっしゃるということをうかがったんですね。であれば、この施設が出来上がったら、その福島からの避難だったり、一時疎開のようなことを受け入れるように活用していこうということで、今、話を進めているところです。
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―今後の支援、バイオマスと雇用創出
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今後、さらに復興していく中で、どんな支援が求められているのかというと、今回、津波の被害が大きかった沿岸部というのは、もう震災前から少子高齢化が進んでおりまして、なかなか若い人が働く場がなかったところなんですね。さらに震災で家も仕事もなくなり、どんどん内陸部に若い人が移っていき、そこで仕事を見つけて働き出しているという状況です。
今後、被災地が復興していっても、結局そこに住む人、若い世代がいなければ当然、10年後20年後その地域は疲弊してしまう、なので今後復興していく中で、私たちは、新しい雇用の場を作り出すことが大事だなと思っております。
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なぜバイオマス燃料の普及と雇用の創出がつながるかといいますと、日本のエネルギー自給率というのは、4%と言われています。これを言い換えると私たちが払っている水道、光熱費などは、96%が海外、特にアラブの中東の方に流れていってしまうお金なんですね。エネルギーを使えば使うほど、地域の中でせっかく稼いだお金も海外に吸い取られてしまうんです。それを使えば使うほど、地域の雇用も失われて、地域が貧しくなってしまうというのがあります。
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この化石燃料の使用というものによって、地域はいつまでたっても豊かになれないと言われています。それを森林燃料、私たちがやっているペレット燃料などに切り替えていくと何が起こるかというと、バイオマス先進地であるオーストリアの森林協会が出しているポスターにあるのですが、もし、化石燃料、石油に依存したエネルギー供給を使った場合は、1万人あたり9人の雇用が生まれる。
でももしも、これをバイオマス熱量とかバイオマスの発電とかに切り替えた場合は、135人の雇用が生まれますよという図があります。つまり、石油からバイオマスに切り替えることで、それまで、どんどん地域の外に流れ出ていたお金が地域の中で回り出し、15倍もの雇用が生まれてくるということなんです。
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今、被災地は、エネルギーに対する関心は、すごい高まっていまして、僕らが活動していて、それを強く感じているんですね。一方で、これから復興していく中での雇用の不安ですね。若い人がいなくなってしまうという不安が大きくなっていて。そうした中で、僕たちが森林、木質エネルギー、バイオマスの利用を広めていくということは、単純に環境にいいからとか、山が再生するからとか、温暖化が止まるからというだけではなくて、地域の雇用を生み出すっていう観点からも重要なポイントではないかなと考えております。
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日本の森バイオマス・ネットワーク(http://jfbn.org/